小説 | ナノ


▼ ウォル様

「ちゅむ?」
「ちゃう!ツ!ム!」
「ちゅ!む!」
「ほんまにこの子天使か?可愛すぎん?」
「飛空よかったね〜!ツムお兄ちゃんに遊んでもらって」
「ちゅむに!」

そう言って侑さんに遊んでもらってる飛空は楽しそうで見てるこちらも笑顔になってしまう。隣で不貞腐れている飛雄くんの機嫌を伺おうとぴたっと体を近づけてみると眉間に皺を寄せたままこちらを見てくる。

「ごめんね?」
「名前さんは悪くねぇよ。宮さんと日向が悪ぃ」

ことの発端は、日向くんからの電話と宮さんの訪問が同時に起きた1時間前のことだった。

昨日試合を終えて帰宅した飛雄くんから明日急にオフになったと聞かされわたしと飛空は「やった〜!」と喜びお昼をゆっくり過ごしてから少し大きい公園に飛空を連れて行く予定だった。
飛雄くんがシャワーを浴びている間にインターホンが鳴り「宅急便です〜!」と言われオートロックを解除しハンコを持って扉を開けると宮さんが立っていた。

「え?!あ、ジャッカルの...!」
「名前ちゃん俺のこと知ってくれてたん?嬉しいな〜!飛雄くんおる?」
「は、はい!どうぞ...」

宮さんを家に招き入れたのと同時に飛雄くんがシャワーを終えて誰かと電話しながら怒っている様子だった。

「あ?!日向ボケ!宮さんが?家に向かって、」
「飛雄くんこんにちわ〜!」
「もう居る!!!!!!お前も今すぐ責任持ってこい」
「あれ?もしかして俺邪魔やった?」
「はい」
「またまたそんな事言うて〜!はい、これお土産」
「ありがとうございます!」

宮さんからお土産を受け取り、飛空が起きたのかぐずぐずの声が寝室から聞こえる。

「ママ〜〜」
「飛空、おはよう」
「パパ?」
「パパもいてるよ〜」

抱っこしながら飛雄くんの方へ連れて行くと嬉しそうに「パパ!だっこ!」と飛雄くんへバトンタッチする。「だぁれ?」と宮さんを指差して聞く飛空に飛雄くんが「宮さんだ」と答え、冒頭に戻る。

宮さんも日向くんもお昼ご飯食べるだろうと、少し多めに用意していると日向くんも家に着いたのかインターホンが鳴り迎える。

「こんにちは!いきなりすいません!」
「日向くんこんにちは。どうぞ上がって」
「宮さんに影山に贈りたいものあるから住所教えてって言われて教えたら直接行ってると思わなくて...」
「ふふ、びっくりしたけど飛雄くんがいてる時でよかったぁ」
「俺らも今日オフで明日大阪帰るんでよかったっす!」
「飛空〜!翔ちゃんきてくれたよ」

リビングで遊んでいる飛空にそう声をかけると「しょーたん!」と玄関に走ってくる。その姿が微笑ましくて日向くんきっと子供にも人気なんだろうなぁと感じてしまう。

日向くんと宮さんに遊んでもらってる間も飛空はべったり飛雄くんの膝の上でやっぱりパパ大好きだなぁとスマホでこっそり写真を撮る。

「ほんまごめんなぁ、急に来てお昼ご飯まで恵んでもらって。名前ちゃんほんま絶対良い嫁なるわ〜!俺と結婚しよな?」
「いや、もう俺の嫁なんで無理です」
「とあくんもままとけっこんする!」
「あ?名前さんは俺のだからダメだ」
「や〜〜だ〜〜!とあくんのままなの!」
「ちげぇ、俺のだ」
「ママ〜〜!」
「影山...お前ほんっと大人気ねぇな...」
「飛雄くんごめん、俺もちょっと引くわ」

ぐすぐすと泣いてる飛空がキッチンに駆け込んできて「どうしたの?」と聞くとなんとなく状況を理解して顔が赤くなる。平常心を保ちながら影山家特製ポークカレーを運ぼうとすると飛雄くんもキッチンに現れる。

「持って行く」

ありがとう、と言おうとし飛雄くんの方を振り返ると急に飛雄くんがキスをしてきて驚いて飛空のプラスチックのお皿を床に落としてしまう。

「な、」
「別に良いだろ夫婦なんだし」

そう言ってキッチンから出て行った飛雄くんに心を乱されていると飛空が嬉しそうに「パパがママにちゅーしたぁ!」と大きい声で話しながらリビングに戻っていく。居た堪れない気持ちのままリビングに戻ると日向くんも宮さんもにやにやとした表情でわたしを見てくる。

「「ご馳走様でした」」

その言葉はまだ手をつけてないカレーのことではないことくらいすぐにわかった。恥ずかしい。飛雄くんのバカ。



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